11/2(土)
~行政法の視点から制度の本質に迫る!~
担当: 全青司 司法・司法書士制度等研究対策委員会
~家族単位から個人単位へ~
担当: 全青司 民法・不動産登記等研究委員会
担当: 岡山県青年司法書士協議会
担当: 全青司 起業支援推進委員会
~とある司法書士の債務整理理念の継承/本来の債務整理をとりもどせ!!~
担当: 全青司 生活再建支援推進委員会
担当: 公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート静岡支部
11/3(日)
~私たちがなんとかします!
担当: 静岡県青年司法書士協議会 司法書士 中里功
担当: 全青司 人権擁護委員会
~司法書士の役割~
担当: 全青司 司法アクセス推進委員会
~大川小学校津波被災事件国家賠償訴訟から考える~
担当: 本人訴訟支援研究会
~よりよい共存社会の実現のため~
担当: 全青司 憲法委員会
令和最先端の士業DXセミナー
担当: 司法書士 久松秀之
不動産登記制度再考
~行政法の視点から制度の本質に迫る!~
当委員会は、司法制度及び司法書士制度を研究することで、市民にとって有用な制度の未来の実現に資するために活動している委員会です。
新しい法制度の正しい理解、 DX化への対応、新しい制度や技術の社会的課題の抽出・制度提言などを積極的に行いたいと考えています。
今年(2024年)は、相続登記義務化元年とも呼ばれ、義務を課せられる市民にとって、相続登記への関心は以前よりも高まっていることが、実際の相談件数などからも感じられます。
各地の法務局では、相続登記義務化に伴い、自分で申請を行う人のためのマニュアルの整備や、手続案内窓口の拡充を行っています。このような法務局の行政サービスを頼りに行う本人申請が増加する中、法務局は、相談対応、補正対応といった負担を強いられていたり、申請人の実体法の理解不足や誤認により、実体と異なる登記が実行されたといった事態は皆さんも少なからず耳にしたことがあるのではないでしょうか。
登記官に形式的審査権しかない現在の登記制度は、実体法上の判断やその過程が重要な要素であることも多く、司法書士は日々、実体法上の権利関係の調査、把握に努めていることと思います。「書類を揃えて申請すれば誰でも簡単に登記ができる」というある意味で誤った理解に基づく運用は、事実を公示するという登記制度への信頼を揺るがす事態に発展する可能性をもはらんでいるのではないでしょうか。
この「なんとかならんか!」という問題を考えるにあたり、まずは、法務局の持つ機能に着目し、法務局の行政庁としての役割、「登記」の法的性質、そして「行政機関と関わる」という視点での司法書土の役割を、民法や不動産登記法からだけではなく、行政法学の視点から検討してみてはどうかと考え、本分科会を企画しました。
第1部
京都大学 法学研究科教授「原田 大樹 先生」による基調講演
第2部
パネルディスカッション / 原田大樹先生と当委員会メンバーによるパネルディスカッション
原田 大樹 氏
出身:福岡県北九州市
専門:公法学(行政法学)
現職:京都大学法学系(大学院法学研究科)教授(法曹養成専攻
[著書・論文]
『グラフィック行政法入門』(新世社・2017年)
『現代実定法入門‐人と法と社会をつなぐ[第3版]』(弘文堂・2023年)ほか多数
論文:「行政法学から見た不動産登記法」秋山靖浩編『新しい土地法』(日本評論社・2022年)117-147頁
「行政法学から見た相談支援」法律時報94巻1号(2022年)31-37頁
「官報電子化法の理論的意義」ジュリスト1598号(2024年)62-68頁ほか多数
なんとかならんか!戸籍制度
~家族単位から個人単位へ~
戸籍法が改正され、令和6年3月1日から、戸籍証明書等の広域交付や戸籍届出時における戸籍証明書等の添付不要の取り扱いが開始しました。今後、更なるネットワーク化が進められることにより、司法書士の戸籍の職務上請求は減少していくかもしれません。しかし、マイナンバー制度の利活用が進む中で、改めて考えてみると、そもそも戸籍制度はいまだ必要なのでしょうか?
私たち民法・不動産登記等研究委員会は、昨年度、「無戸籍問題」や「選択的夫婦別姓制度」について研究を行いました。その中で、戸籍制度が市民を苦しめる共通の原因になっているのではないかという疑問が発生しました。
戦後、「家」制度の廃止に伴う民法及び戸籍法改正から、まもなく80年が経過しようとしています。社会や家族の在り方、戸籍制度をとりまく状況も大きく変化している今、時代に合った戸籍制度の進化を求めてなんとかならんか、なんとかしたい想いで私たちは研究を始めました。
本分科会では、家族法を専門に研究されている二宮周平先生を講師にお招きし、戸籍制度の歴史と現状、今後の課題についてご講義いただきます。また、委員からこれまでの研究の成果を発表すると共に、司法書士として私たちが取り組めることを皆さまと一緒に考える時間とする予定です。
業務で日々触れてきた戸籍制度について、普段考えたことのない視点から、今後の在り方を一緒に考えてみませんか。私たち司法書土がなんとかできることがあるはずです。
・外部講師による基調講演
・パネルディスカッション等
二宮 周平 氏
1951年横浜生まれ、松山で育つ。
大阪大学大学院博士課程中退、1985年から立命館大学法学部、定年退職後も立命で勤務。立命館大学名誉教授、法学博士(大阪大学)。
専攻は家族法。
主な著書として『家族法[第5版]』、『新版戸籍と人権』、編著として『新注釈民法(17)』、『現代家族法講座全5巻』など。
貧困×空き家のソーシャルビジネス
司法書士が、これまで社会課題として取り組んできた空き家問題や、貧困問題等の課題に対して、「ソーシャルビジネス」という観点からアプローチした事例について、研究する分科会です。講師である合同会社Renovate Japan代表甲斐隆之氏は、幼少期に父親を亡くし、母と共に社会のセーフティネットに支えられて育ったという原体験があります。「人が生きづらい状況に陥るのは、社会構造によるところが大きいのではないか」という気づきから、「生まれや育った環境によって、生活や機会の格差が生じる世界の仕組みを変えたい」と思うようになったそうです。
合同会社Renovate Japanでは、「リノベーター」と呼ばれる生活支援を受ける人たちが、今まで空き家だった物件の整備済みの空間に住み込み、自ら残りの改修作業の補助に参加することで、給料を発生させ、就労や住まいの確保などの生活基盤を整える事業を行っています。「リノベーター」は基本的に他の支援団体からの紹介です。完成後の物件に家賃を支払い、住み続けることも可能で、就労や適切なセーフティネットヘ繋がることにより、この事業を卒業します。もちろんボランティアではなく、改修された物件をシェアハウスやゲストハウスなどの形で運用することで、収益化にも成功しています。また利用料の一部がそのまま社会貢献に繋がる施設等へ送られる仕組みもあり、より社会貢献の高い企業として今注目されています。
司法書士の歴史も社会課題と向き合う歴史でした。多くの司法書士が、「社会のためになんとかならんか!」という高い志を持って活動するも、多くの苦労と挫折を味わってきた歴史でもありました。今回、この分科会では、そういった司法書土の強い課題意識に対して、「ソーシャルビジネス」という観点を普段の業務に取り入れることで、社会的に意味のある活動に対しての永続性、営利性を学べる機会を提供します。いつもと違う観点から社会課題を見ること、発想することで、司法書土の可能性を拡げましょう。
第1部
合同会社Renovate Japan代表 甲斐隆之氏による講演
第2部
グループディスカッション
甲斐 隆之 氏
合同会社Renovate Japan 代表。
幼少期から「生きづらさ」を感じ、一橋大学に進学後の授業で、貧困等の社会問題に興味をもつ。大学時代は、学生団体の同志と積極的に活動し、卒業後は公共事業のコンサルティングに従事する。官民連携やまちづくり政策を担当し貢献した。その後、退職し、2020年10月Renovate Japanを創業。途中、アジア地域の貧困削減に取り組む国際機関、アジア開発銀行で研究員も兼任した。
今夏には、焼津にて、初の宿泊事業であるCRAFTHOTEL西町DOCKを計画中。
初学者のための商事契約入門【2024】
企業支援推進委員会は「登記に留まらない企業支援の在り方を考える。」という理念の下で活動をしています。
司法書士がその知識・権能を活かすことができるのは、商業法人登記に留まらないより広範囲の分野に及ぶと考えているからです。これまでにも様々な事項について研究を行い、その成果を過去の全国研修会の場で発表してきました。
その中で当委員会が重要と考えて実施してきたのが、司法書士による商事契約の支援の実践です。全国に商事契約支援の実務に取り組む仲間を増やすべく、過去にも2度、全国研修会の場で取り上げてきました。
企業活動は日々の取引の集積であり、その取引における契約(≒契約書の作成)が非常に重要になってきます。ただ、その一方で、特に中小零細企業においては、顧問弁護士などによる契約業務の支援を受ける機会のないことも多く、汎用性の高いひな型そのままの契約書を、個々の事例に合わせることなく用いているケースや、そもそも契約書の作成すらなされない場合も見られます。このような現状の中、我々司法書士が関与する企業に対し、登記に留まらない契約の場面でも支援をすることができれば、より地域企業の利益に資するものと考えています。近年、契約法を含む民法債権法分野に関する大きな改正もあり、改めて契約について学ぶことは、我々が企業支援を行うにあたって大きな意義があると考え、本分科会を企画しました。
現在、登記件数の減少や新たな技術の台頭など、我々を取り巻く業務環境はこれまで以上に目まぐるしく変化しています。登記業務に留まらない、より付加価値の高い業務の実践や、司法書土がその権能をより活かすことのできる新たな分野を創造していくことが求められます。皆様もこの機会に商事契約という分野を学び、企業支援を行うきっかけとしてみませんか。
なお、本研修ではまず商事契約に関する基礎事項を学んだ後、参加者の皆様自身での事例検討を通して契約業務のイメージをもってもらいつつ、事例に基づくポイン トごとに必要な知識を解説していく予定です。本研修を通じて、参加者が自ら主体的に考えることにより、特定の依頼者の困りごと・ニーズを自分が「なんとかするんだ!」という疑似体験をしてほしいと考えています。
2. 参加者自身で事例検討を行う時間を設け、事例における契約につき主体的に考える機会とする。
3. 事例に関する解説及びその周辺知識に関する解説を行うことにより、より詳細な契約知識を身に着ける機会とする。
司法書士の司法書士による司法書士のための生活再建支援塾!
~とある司法書士の債務整理理念の継承/本来の債務整理をとりもどせ!!~
若手司法書士は債務整理業務をやったことがない、もしくはやらないと聞くようになって久しいのが現状です。
登記件数が右肩下がりである現状において、登録間もない司法書士は「登記業務で食べていけるのか」と考えるのが普通ですし、現に活躍している司法書士も「いつまでも登記業務にだけ目を向けていても良いのか」と考えることもあるのではないでしょうか。
当委員会は、市民の生活再建を支援していくと同時に、司法書士自身の裁判業務全般の受託推進を図る委員会です。債務整理や裁判業務に苦手意識のある司法書士に対し、少しでも興味を持ってもらいたいと考えています。
司法書土による生活再建支援の歴史は、諸先輩方による目の前の問題に対する「何とかならんか!」という解決意識の積み重ねであり、当委員会はこの理念を継承していくことが重要だとの考えから、この分科会を企画しました。
昨今、司法書士や弁護士が債務整理の際、依頼者と一度も会うことなく手続を進める「会わずの弁護士・司法書士」問題がテレビでも取り上げられ社会問題となっています。諸先輩方が血のにじむ思いで取り組んでこられた生活再建支援に対する姿勢を踏み潰すこの問題の最新の動向を当分科会で取り入れたうえで、今後我々がどのように諸問題に対し取り組んでいくべきかを一緒に考えたいと思います。司法書土が社会問題に目を向けるべき機会は確実に増えています。今一度、生活再建支援に直結する債務整理の在り方を肌で感じてください。
当分科会を通じ、司法書土法第1条にある「市民の権利擁護の担い手として、自由かつ公正な社会の形成に寄与すること」という使命規程を再認識し、市民のために進化し続ける司法書土であり続けましょう!
第1部
基調講演
全青司元会長であり、長野県司法書士会副会長の川上真吾さんをお招きし、「会わずの弁護士・司法書士」問題の最新の動向から債務整理業務の基本的な心構えについてご講演いただきます。
第2部
ロールプレイング
受講者のみなさまを含めて、債務整理相談のロールプレイを実施します。債務整理業務をやったことがない・苦手意識がある司法書士の皆様にはノウハウを学べる良い機会になると思います。
司法書士が未成年後見に取り組む意義
リーガルサポートは、未成年後見制度に関する事業を新たに公益目的事業に加え、令和7年4月から、未成年後見制度を通じて未成年者の権利の擁護と福祉の増進に取り組むこととなりました。私たち司法書士は、成年後見人等として、高齢者・障害者等のための権利擁護活動を行ってきており、特に財産管理については、 一定のノウハウを持っています。 一方で、「成年後見と未成年後見では全然違う」とか、「成長途中の未成年の子どもにどう接したらよいか分からない」といった漠然とした不安を、多くの司法書士が持っていることでしょう。
しかし、学校、行政、児童相談所等の児童福祉の現場には、「なんとかならんか!」の声にあふれています。そこには、事故や災害で親を亡くしてしまったといったものから、児童虐待、ネグレクト、ヤングケアラーの問題等まで、様々な要因が存在しています。それらの問題について、私たち司法書土は直接的な解決策を持ち合わせていないのは事実ですが、子どもたちのための権利擁護への手助けを求める声に背を向けることは私たちの使命に反します。家庭裁判所も、司法書士に対し、法律専門職として未成年後見人・監督人に就任し役割を果たすことを期待していると聞いています。
私たち司法書士は、社会や行政・家庭裁判所からの期待に応えるべく、未成年後見業務に対応する準備をしようではありませんか。
そこで、まずは基調講演において現場の実情について学ぶとともに、現場の支援者が司法書士に寄せる期待をお聞かせいただき、その上で私たち司法書士に求められる未成年後見業務とは何なのかを一緒に考えていきます。
未成年後見人に選任されたとしても、「親代わり」になって全部に関わることを求められているのではありません。また、チームで支援することになる点では、我々が日々行っている成年後見業務と同じであることを知ってもらい、多くの司法書士にとって未成年後見への不安を和らげる成果となるような研修内容を企画しています。
所有者不明土地解消・活用のレシピ
~私たちがなんとかします!
所有者不明土地法制をめぐる一連の立法作業が完結し、改正民法・不動産登記法、国庫帰属法は、立法担当者から実務家である私たちにバトンタッチされました。多岐にわたる改正条文に習熟し、相談現場においてこれを駆使して所有者不明土地問題の解消にいかに寄与することができるのか。今まさに、実務家の力量と責任が問われています。
ことに、国民から権利の登記をほぼ独占的に請け負っている司法書士の責任は、極めて重いと認識しなければなりません。
本講義のタイトルは“レシピ”です。レシピといえば料理ですが、レシピを参考にすることで料理の素人がプロのノウハウを簡単に実践できプロ顔負けの料理を提供できるように、本講義を受講することによりだれでも躊躇なく事件を受任し、質の高い解決策を提供することができるようになろう、そんな願いを込めたネーミングです。
私たちは皆、条文を読み込み、法が成立した背景や経緯を洞察することにより、依頼者の課題に対する法律実務家としての「解」を必ず導き出すための能力を備えています。本講義で提供する“レシピ”を縦横無尽に駆使し、所有者不明土地の解消・活用の一翼を担っていただくことを切望します。
講義を担当する司法書土は、いずれも裁判手続や難易度の高い相続手続に対する豊富な経験を有しており、一方的な講義ではなく、法律実務家の視点から依頼者の抱える問題を解決するために議論を闘わせる様子を垣間見られる構成を予定しています。
なお、本講義では、法、令、規則、通達等の諸規則にあたりながら受講いただきます。条文等の準備はいたしませんので、受講生各自で準備のうえ受講してください。
なんとかならんか、子どものための面会交流
面会交流事件が家庭裁判所に持ち込まれるとき、その当事者は父親と母親です。しかし、交流を行うのは子どもとその親です。実際の当事者は子ども達でもあります。
子の監護に関する処分(面会交流)の審判をする場合に、15歳以上の子の意見を聞かなければならないとなっており、15歳未満であっても、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮し、子の意思を把握するように努めることになっています。
面会交流事件は、夫婦の葛藤に子どもが巻きこまれやすい類型で、そのため、両親不合意型の実施決定がなされる ケースも散見されます。果たして、子の意思はどこまで反映されているのでしょうか。
司法書土は、裁判所提出書類作成を業として行うことができます。つまり、書類作成を通して、子の意思意向をあらかじめ調停の場に提示することができる機会をもっているということです。
よりよい面会交流の組み立て(それは時にして会わないという選択もあるかもしれません)、親子の関係をよりよいものとするために、この分科会で一緒に学んでみませんか。
第1部
講演
養育費や財産分与等「裁判官の視点に見る」シリーズを上梓されている松本哲私弁護士に、面会交流の法的な位置づけや意義、家庭裁判所の調停内で面会交流をどのように扱っているか教授いただきます。また、父母の意見が折り合わない場合の解決の調整の一例をお聞きします。
第2部
パネルディスカッション 光本歩氏x親の離婚を経験した当事者
面会交流実施の第三者支援機関であるNPO法人ウィーズの理事長光本歩氏をお招きし、親の離婚にあたって、子どもが何を思い、何を考えるのかお聞かせいただきます。また、子どもの立場として当事者となった方々に、離婚の際、また面会交流の際に何を考え、何を思ったのかお聞かせいただきます。
松本哲弘氏 [弁護士]
富山地方・家庭裁判所所長、和歌山地方・家庭裁判所所長を経て、大阪高等裁判所総括判事。 2011年、定年退官。2012年より関西大学院教授。2014年、弁護士登録。2017年、瑞宝重光章受章。
主な著書
『離婚に伴う財産分与‐裁判官の視点にみる分与の実務‐』(新日本法規出版、2019年)
『[改訂版]婚姻費用・養育費の算定‐裁判官の視点にみる算定の実務‐』(新日本法規出版、2020年)『即解330問婚姻費用・養育費の算定実務』(新日本法規出版、2021年)
『面会交流‐裁判官の視点にみるその在り方‐』(新日本法規出版、2022年)など
光本歩氏[NPO法人ウィーズ理事長]
両親が離婚し、自らが父子家庭に育った経験をもとに「子どもが育つ環境によって、抱く希望や夢に制限がかかってはいけない」という思いから学習塾を立ち上げ、多くの子どもたちの声を聞き大人たちに届け、良好な親子関係と健全な自尊心を育むための支援活動を行ってきた。2016年特定非営利活動法人ウィーズ設立、理事長。第三次静岡県ひとり親家庭自立促進計画委員。
誰もが司法に繋がれる世の中のために
~司法書士の役割~
ネットやSNSで様々な情報が溢れ、オンラインなど様々なツールの活用が進む現代にあっても、全ての市民が遍く司法サービスにアクセスできているとは言えません。
司法アクセスについての従来の問題である司法過疎の問題のほかにも、身体的な機能の問題や、言語の問題、貧困など様々な事情により司法にアクセスできない市民が数多く存在します。そのような市民に対して我々司法書士にどのようなことができるのか、各自で取り組める一歩、小さくても確かな一歩を踏み出すきっかけを作りたいと考えています。
本分科会では、身体的機能(聴覚)に障害のある方を支援している司法書士からの活動報告のほか、静岡会が取り組んでいる司法過疎地における相談事業の報告・検証や活用できる制度の紹介を行い、市民が等しく司法へのアクセスを保障されるために、我々が取り組むべき問題を考えます。また、司法過疎や身体的機能の問題にとどまらず、様々な理由により司法サービスにアクセスで きない事例を取り上げることで、身近に存在する司法アクセス難民ともいえる市民への気づきを得ていただくことを目的としています。
司法へのアクセスが困難な市民の方は、その事情を他者に伝え理解してもらうことから困難であり、支援できる可能性を持つ側からの気づき・環境整備が必要です。日々のわずかな活動・小さな一歩であっても、アクセスヘの支援を要する市民にとっては貴重な支援になり得ます。分科会にご参加いただいた皆様の日々の業務に、新たな気づきとなることを願います。
第1部
活動紹介①
木原道雄司法書士(愛媛会・日司連市民の権利擁護推進室障がい者の権利擁護部会室委員)から、聴覚障害者への支援活動・支援団体の活動等について、及び支援活動における気づきのあり方・心構え等についてご紹介いただきます。
第2部
活動紹介②
静岡会において継続的に行っている司法過疎地相談事業につき報告いただきます。開催についてのノウハウ・成果等を共有することで、事業の有用性を感じていただき、各地での相談活動開催の一助となることを願います。
第3部
パネルディスカッション・まとめ
活動紹介のほか、現代に存在しうる司法アクセスヘの支障となる事例・支援方法について議論し、我々司法書士が明日の業務から取り組める一歩への道標を示せればと考えます。
「生きる」を支える専門家とは
~大川小学校津波被災事件国家賠償訴訟から考える~
児童ら84人が東日本大震災の津波で亡くなった宮城県石巻市の大川小学校。学校制度創設以来、学校管理下の被災事件として最多数の被害者を出しました。市内の他の小学校ではほとんど児童の命が奪われることはなかったのに、なぜ大川小学校だけなのか。説明を求める親たちへの行政の対応は誠意を欠き、嘘や隠ぺいがあると感じた親たちは真実を知るため石巻市と宮城県を被告にして国家賠償請求の裁判を起こしました。 この原告団には大きな特徴があります。それは原告が「我が子の事実上の代理人弁護士」となって活動し、それを二人の弁護士が支えたこと。原告団は誹謗中傷を受けながらも誰一人欠けることなく5年にわたる裁判を闘い、市や教育委員会校長、教頭らの平時からの組織的過失を認定する、画期的な判決を勝ち取りました(仙台高判平成30年4月26日平成28年[ネ]第381号,国家賠償等請求控訴事件(判例時報2387号31頁)、最高裁上告棄却及び上告不受理決定)。
控訴審の判決言渡後の会見では、遺族はそれまでとは全く違った表情で、裁判官から心ある判決をもらえた、感無量の時間だったと語りました。求めていた真実は、裁判では明らかになったとは言えないにも関わらず。
学校に限らず我が国の防災全体における重要な礎となりうる本件裁判の意義と可能性、また裁判を通じて原告の「生きる」を支え勝訴に導いた代理人弁護士の発想と戦略に触れ、紛争解決に対する視野を広げること、法の実現と被害者に向き合うことについて考えを深めることのできる機会とします。
吉岡和弘氏 [弁護士/仙台弁護士会]
吉岡法律事務所。日弁連消費者問題対策委員会委員長、適格消費者団体・消費者市民ネットとうほく代表、欠陥住宅被害全国連絡協議会代表等
齋藤雅弘氏 [弁護士/東京弁護士会]
四谷の森法律事務所。日弁連消費者問題対策委員会委員、早稲田大学法科大学院・法学部、亜細亜大学法学部の各非常勤講師、(公社)全国消費生活相談員協会理事等
寺田和弘氏 [映画監督]
映画『「生きる」大川小学校津波裁判を闘った人たち』で第78回毎日映画コンクールドキュメンタリー映画賞他受賞多数
※上記ショートフィルム制作者
安藤信明氏 [司法書士/東京司法書士会]
本人訴訟支援研究会会員
愛知教育大学教育ガバナンスコース非常勤講師(学校コンフリクト演習、教育メディエーター演習)
「意見の表明とキャンセル・カルチャー」
~よりよい共存社会の実現のため~
近年、インターネットとソーシャルメディアの急速な普及により、私たちは情報発信の手段を多様化させ、また大量の情報を受信することが容易になりました。この変化は、個人が意見を自由に表明し、広範囲にわたって共有できるという利点をもたらした一方で、SNS誹謗中傷被害の増加、デマ情報の拡散、プライバシーの侵害など、ソーシャルメディア上の表現が社会に及ぼす負の側面も浮き彫りになっています。
こうした状況を受けて、2021年にプロバイダ責任制限法が改正され、翌2022年には侮辱罪の法定刑が引き上げられました。これは、誰もが言論空間に自由かつ安全に参加できるというメリットを公平に享受するための法制度として、必要な対策をとらねばならなかった問題と理解されています。
他方で、「言論の表明」は可能性としては常にだれかを不快にさせ傷つけるものであり、異論や意見の衝突の中から試行錯誤を繰り返していくことによって社会は進んでいくものでありますが、昨今のSNS上の発言のやりとりにおいては、言論空間における「批判」として尊重されるべきものと、言論空間からの「排除」となる法的に是認されない行為との違いがほとんど整理されないまま野放しになっているという状況にあります。
そこで、本分科会においては、第1部で講師の志田陽子先生に、ソーシャルメディア時代における「表現の自由」の意義と課題について講義をしていただき、第2部では、憲法委員会メンバーを中心に参加者全員で、「表現の自由」の保障をもっとも必要としている少数者の声が見えなくさせられることのない、よりよい共存社会を築いていくために私たちが何をしていくべきかについてディスカッションを行います。
第1部
志田陽子先生による講演
第2部
ディスカッション
志田 陽子 氏
武蔵野美術大学造形学部教授、東京都立大学システムデザイン学部客員教授、早稲田大学非常勤講師。専門は憲法と言論・芸術関連法。博士(法学)。
著書に『「表現の自由」の明日へ』(2018年)、『映画で学ぶ憲法II』(編著、2021年)、『日本は本当に戦争に備えるのですか?』(共著、2023年)、『表現者のための窓法入門第2版』(2024年)など。「歌でつなぐ憲法の話」など、文化芸術を題材に、市民向けの憲法講演活動も行っている。
個人ホームページ「志田陽子オフィシャルサイト」https://yokoshida.net/
AI時代の司法書士超・業務効率化
令和最先端の士業DXセミナー
「事務所の受任状況や作業状況がどうなっているか整理しきれず、ストレスが増大している」「資料を探し整理する時間が多すぎる」「計算やチェックに時間がかかっている」「昼間は電話や面談対応に追われすぎ、結果として毎日残業ばかりしている」「単純なケアレスミスが多く、それを防止するために大量のチェック作業に忙殺されている」
ここ数年の司法書士の実務効率化の場において、こういった事件遂行・管理進行と正確性の担保に関する悩みは増加する一方です。
他方、完全オンライン申請や電子契約といった電子データによる契約や行政手続の普及が現実となりつつあり、それに併せて旧来の紙面による情報管理交換からの脱却、いわゆる「DX」の推進が司法書士業界も急務となりつつあります。
DXとは「業務のフローを一から見直した上で、より迅速で効率的な新しい業務フローを(システムを利用して)再構築する」ことです。この点に従えば、司法書士業務におけるDXとはすなわち
1. Excelをはじめとするソフトや周辺機器を活用し作業を正確且つ大幅に時間短縮する
2.報連相や相談記録、顧客情報や全体事件進行などのあらゆる情報に、いつでも瞬時にアクセスして管理し、迅速な伝達と記録が行える環境を構築する
この2点に集約されます。この2点のどちらが欠けても成り立ちません。
DXとは司法書士の将来のための不可欠な変革であり、同時に現代の事務管理の諸問題を解決する手法でもあります。
そこで本分科会では、この「正しいDXと管理問題解決策の構築」について、理論と実践のお話をさせて頂きます。
(ア)正確迅速な計算、事務処理
①どの事務所でも再現できる、各種システム・周辺機器を利用した高速・正確な事務処理方法の取り組み実例
②システムベンダーソフトより早く、正確な作業を実現するExcel活用術
(イ)全体の正確な管理・報連相・記録管理
①顧客名簿・事件管理・報連相を包括的に行うシステムやルールの作り方
②非同期型コミュニケーションの重要性:完全リモートワークの事例から学ぶ
2.AIと司法書士業務の違いを知る:どう差別化する・どう使うのか
3.「間違った/失敗したDX」の事例を学ぶ
4.本当に効率的な組織の構成を検討する